あなたは公園の道を歩き続けていた。
周りに視線を走らせ、誰もいない事を確かめる。
花壇を通り過ぎると、見晴らしの良い芝生の広場に出た。
ここならば“鬼”が来ても良く見えるが・・・・そう思った瞬間、

「来た来た!」

あなたの後ろから、セミロングの髪を揺らしながら美女・・・“鬼”が追いかけてきた。
あなたは疲れた足に鞭打って走り出したが・・・?

「ウソだろ!!」

正面からも、別の美女が?!

あなたは歯を食いしばると、ラグビー選手がタックルをかわすように体を捻って“鬼”を避けようとしたが?

「?!」
あなたに飛びつくように美女が手を伸ばす。その手にはあのカードが?!
「やめろ!」
あなたが叫ぶと同時に、



『ボン!』



赤い閃光と、白い光の煙が沸きあがった。

「なんだ?!」

あなたの体は宙に浮かんだようになり、その後どこかへ“落ちて”行く。
あなたはドスンと尻餅をついた。
「いたた・・・」
顔をしかめるあなた。 辺りを見回す。
「ここは・・・?」
ステンドグラスから入る光や、蝋燭の温かい光があなたを照らす。
そしてあなたの正面には、大きな聖母像が・・・。
あなたがいるのは、立派な礼拝堂の中だった。
「まさか・・・?」
あなたの中に、いやな予感が渦巻く。
礼拝堂の中に乾いた足音が響く。 あなたはハッとして振り返った。 そこには美女・・・あなたを捕まえた“鬼”が微笑を浮かべながら立っていた。
「俺を元の場所に戻せ!」
あなたは美女に凄んでみた・・・しかし、美女は微笑むだけだ。逆に・・・。

「さあ、一緒に聖母様にお祈りしましょう・・・」

彼女の微笑む笑顔を見つめるあなた。

『早く逃げろ!!』

心の中で理性が叫んでいるのだが、あなたは自分の意思に反して、彼女と一緒に聖母像の前に進んでいった。
「さあ、一緒に祈りましょう・・・」
彼女があなたを見ながら微笑む。
あなたは床に膝を着いた。

『危ない! やめろ!!』

あなたの中で理性が叫んでいる。
しかし、あなたは目を閉じて両手を合わせた。
次の瞬間、

「?!」
あなたはおなかの部分に違和感を感じた。
『何かが張り付いた?』
あなたは目を開けて視線を落とした。 
あなたのおなか・・・ちょうどお臍の辺りに、チューブのようなものが付いているではないか?
視線でチューブの行方を追うと、その先は聖母像のお腹に・・・?
あなたは驚いて、傍らで祈り続ける美女に視線を向けた。
彼女は祈りをやめて、あなたの方を見た・・・その顔には微笑が浮かぶ。

「あなたは、聖母様の子供になるのよ」

あなたは、まだ彼女の言葉が理解できなかった・・・いや、このようなことを言われれば、大抵の者はそうだろう。
その言葉の意味が理解できたのは、あなたの体に変化が起き始めたときだった。
チューブを通じて、何か暖かいものがあなたの体に流れ込んでくる。
あなたは、思わず自分の体を抱きしめた。 いつもとは感覚が違う・・・まるで体全体が敏感になってしまったようだ。
「あれっ?」
あなたは体を抱きしめている手に違和感を感じる。
日に焼けているはずなのに、なんだか色が白い? それに皮膚だってこんなにすべすべ・・・肌理が細かかったかな?
そんなことを思っている間に、あなたの体は次の変化を迎えていた。

頭がムズムズする。
あなたが頭に手を当てると、いつもより細く感じる髪が、スルスルと伸びてくる。
あなたは“自分の髪”を手にとって見た。まるで”女性の髪”だ。
「?!」
あなたの着ているシャツは、肩の部分がダボダボになってしまった。
思わずウエストに手をあてるあなた・・・あなたの胴の今までよりも高い場所に女性としか思えない”くびれ”ができているではないか。
ズボンのベルトから音がした。
ウエストが細くなったので、ベルトがブカブカになってしまったのだ。
それとは反対に、ヒップが大きく膨らんでズボンがはち切れそうになっている。
気が付けば、足も内股になっているではないか?

礼拝堂に響く祈りの声が大きくなる。
周りを見回すと、ブレザーの制服を着た女子学生が、祈りをささげている。 さっきまで、誰もいなかったはずなのに?
そう思っていたあなたのズボンが、どんどん短くなっていく。
ズボンの両足がひとつにつながり、紺色になり、表面には襞とチェックの模様が入っていく。
「これって?」
呟いたあなたの声は、すっかり女の子のものだ。
戸惑っているあなたから、穿いていたトランクスの感覚がなくなった。
変わりに、ずっと狭い面積を滑らかな肌触りの下着が大きく膨らんだヒップと一緒に包んでいる。
「女の子の下着・・・」
呟きながら、顔が赤くなるあなた。
女性の下着を穿いたことで、股間から男性の象徴が無くなってしまったことを思い知らされる。
混乱しているあなたをよそに、あなたの体の変化は続いている。
胸がムクムクと大きくなり、小さくなった体の中で、そこだけが“男性だったころと同じ幅”を保っているようだ。
ただし、”女性のバスト”ができたためなのだが・・・。
「アッ?!」
思わず声をあげるあなた。
シャツの下で、胸が何かに軽く締め付けられた。
バストの重さが、肩紐で分散される・・・これは?・・・ブラジャー?
ふと見ると、シャツはスクールブラウスに変わり、胸に赤いリボンタイがつけられていた。
大きく膨らんだバストをサポートするブラのラインが薄っすらと透けて見える。頬を赤くするあなた。
「ああっ?・・・そんな?」
恥ずかしくなり、細くしなやかな指を持つ両手で顔を覆うあなた。
そこに感じるのは弓のように細い眉と、長い睫・・・ふっくらと膨らんだ唇。すっかり細くなった顔のラインと、何よりも肌から手のひらに伝わる“女性の肌の感触”だ。
そんなあなたの恥じらいを知ってか、ブラウスの上に紺色のブレザーが現れた・・・・そう、この礼拝堂にいる学生たちと同じように!!
「そんな・・・俺は?」
自分の体を見下ろすあなた。
そこには”男性であった”面影はない。

次の瞬間、聖母像から放たれた眩い閃光があなたを包んでいた。



「綾香?」
「・・・」
「綾香ったら?」
誰かがあなたの肩をポンと叩いた。
「エッ?」
あなたは我に帰った。

今、あなたは女子高校生と一緒に、レンガ造りの立派な礼拝堂の横を歩いている。
体を見下ろすあなた。 長くしなやかな黒髪が頬にかかる。
ブレザーの制服を着ていてもわかる、豊かな胸のふくらみ。 
紺色のチェックのプリーツスカートは太ももの中ほどまでしかない。 そこから伸びる健康的な太ももと、細く引き締まった脹脛。それを紺色のハイソックスが引き締めている。
履いているローファーの革靴は、自分のものとは思えないほど小さい。

『俺は綾香じゃない!』
あなたは、そう答えようとした。

そう、それはあなたの最後の抵抗だったのかもしれない。
しかし、その抵抗は女の子たちによって遮られてしまった。

「アアッ?!」
思わず声をあげるあなた。
女の子の一人が、後ろからあなたの胸を揉んでいる。
「う〜ん・・・綾香はFカップかな?」
周りから笑いが起きる。
「有香、やめなよ・・・綾香がかわいそうよ」
女の子の一人が止めようとした・・・そういいながらも、その声は笑っている。
胸から伝わる”女性としての感覚”・・・それは、男性としてのあなたを完全に飲み込むほどの衝撃だった。

「さあ、聖母様に朝のお祈りをしましょう!」
有香に促されてあなたもみんなと一緒に、立派な樫の扉を開けて礼拝堂に入っていく。



あなたはブレザーの制服に身を包んだ、女子高校生になってしまった。







GAME OVER









                                      <エピローグ>


























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