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これは「駅」をテーマにしたシリーズ小説?です。



3・14ダイヤ改正「さようなら寝台特急『富士』・『はやぶさ』記念」

駅(第2話)


作:逃げ馬





高山徹は、大手貿易会社「トランス物産」度子可野(どこかの)支社の営業マンをしてる。
25歳、入社三年目だが、大きな商談をいくつもまとめ、同期の中では”事実上”売り上げのトップを走っている・・・はずだった。
しかし現実には、いつも営業課の最下位を突っ走っている。

「おい! 高山!!」
この日も支店の営業課長、伊東誠一がオフィスで大きな声をあげていた。
「プレゼンの用意はできているのか?!」
「はい、出来ています!」
「それなら、さっさと車の用意をしろ!」
「はい!」
高山は、プレゼンの資料と、説明用のスライドの入ったUSBメモリーをバッグに入れると、車のキーを持って席を立った。
部屋を出ようとする高山の後ろから、伊東の「あいつは、いつもああなんだ…あれだけグズだから成績も悪いんだよな!」
大きな声が聞こえてきた。
廊下を足早に歩く高山、角を曲がろうとした瞬間、
「あっ?!」
歩いてきた人にぶつかりそうになった。
「失礼!」
思わず声を出し、相手を見ると、
「高山君か」
髪をきれいに七三分けにした中年の男が笑っていた。
「森崎さん」
男は、森崎正敏。年齢は40歳を超えている。伊東に言わせると「あいつは、皮肉ばかり言う嫌なやつ」ということだが、徹から見ると、その皮肉の中に彼への“重要なアドバイス”が隠されている・・・徹はそう思っていた。
「あのおやじ・・・また怒鳴っていたようだな」
少し笑いを浮かべながら尋ねる森崎に、徹はうなずいた。
「少しは自分でも動いてくれれば良いんだけど・・・君も大変だな?」
徹は何も言わずに森崎を見つめている。
この支社のスタッフの多くは伊東の言葉を受けて、森崎の事を「冷たいやつ」、「打算的なやつ」だから、「気に入ったやつを集めてグループを作って反発をするんだ」と言っているようだ。
だが、周りの空気を感じて心配をした徹が、森崎に「気をつけた方がいい」といっても、森崎は「フフン!」と鼻で笑っただけだったが・・・。
「これからプレゼンに出かけるのかな?」
尋ねる森崎に、徹はうなずいた。森崎はニヤリと笑うと、徹の肩をポンと叩くと、
「上手くやれよ!」
それじゃあ・・・と言うと、森崎は右手を上げ廊下を歩いていく。徹もペコリと頭を下げると駐車場に急いだ。



徹は駐車場から車を出すと、ビルの玄関で伊東を乗せた。車を発進させる。
二人を乗せた車が街を滑るように走って行く。
オフィス街は経済が悪化をしているといっても、多くの人が行き交い活気にあふれている。
前の信号が赤に変わった。
徹は車のスピードを落とす。
信号で止まると、助手席に座った伊東は舌打ちを繰り返しながら貧乏揺すりを始めた。
横目で見ながら小さくため息をつく徹。



相手企業のオフィスに着くと、挨拶もそこそこに二人は会議室へ通され、プレゼンが始まった。
スクリーンの前でスライドを使いながら説明をする徹のプレゼンは、相手企業の幹部たちの心を掴んだ。
時折、相手企業の幹部の一人が“上司としての”伊東に質問をすると、伊東はしどろもどろになり、顔が青ざめてしまった。
すかさず、徹が「私どもといたしましては・・・」と的確なフォローを入れて質問に答えた。
徹が答え終わると、伊東は「そう! そうなんです!!」胸を張って質問をした相手を見る。
会議室には失笑が漏れたが、社長が「高山さん、今後ともよろしくお願いします」立ち上がると徹に右手を差し出した。
「あ・・・・ありがとうございます!」
徹も満面の笑みで握手を返す。
商談は、まとまった。



二人が支社に戻ってきた。
オフィスに戻るなり、
「また、“俺が”商談をまとめたぞ!」
伊東の大きな声が響き、オフィスにどよめきが起きた。
「高山の奴、相手が質問をすると青い顔をして固まりやがるんだよ…“尻拭い”が大変だったよ」
オフィス笑い声が起きる。
入り口で黙って聞いていた徹の中で、何かがはじけた。
「伊東さん!」
腕を掴み、廊下に引っ張り出す徹。
皆の前では言わない方が良い・・・というのが徹に残ったわずかな理性だった。
「僕は、伊東さんが仰ったようなことはしていません。それに、“俺が“まとめたって・・・」
「お前は、先方で“私たち”と言っていただろう?」
ニヤリと笑う伊東。
「それなら、この商談は“お前の上司である”俺がまとめた大型商談だ」
伊東の顔を見ながら固まる徹。その卑しげな笑いを見るのが耐えられず、徹は席に戻った。



翌日

支社内の食堂にある掲示板の前に、人だかりがしている。
「まさかなあ・・・?」
「どうしてなのかしら?」
皆が首をかしげながら話をしている。
「どうしたんだ?」
徹が皆の所に歩み寄ると、
「あっ?!」
皆が道をあける。
「どうしたんだよ・・・みんな?」
思わず笑い出した徹。
しかし、その笑いは、掲示板の前で消えてしまった。
そこに張られていたのは、徹の地方支社への転属を命じる辞令だった。
じっと辞令を見つめたまま動かない徹。感情が高まり、その右手がだんだん震え始めた。
振り返ると同時に走り出す徹。
「おい! 高山!!」
呼び止める声も、耳には入らなかった・・・。



「伊東さん?!」
オフィスに飛び込んできた徹に、
「オッ?! 噂をすれば・・・」
伊東は、支社長の大野と話しをしていたようだ。徹が入ってきたのを見ると、その顔に笑みが浮かんだ。
「おめでとう! “栄転”だな?!」
そう言うと同時に笑い出す伊東。
オフィスのスタッフたちは、どこか憐れむような視線を徹に向けている。
「なぜ・・・ぼくが・・・」
唇を噛みしめながら、徹が絞り出すような声で言った。
「事前に全く相談もなく?!」
大野は椅子に座ったまま、全く答えない。伊東は、鼻で笑いながら徹に言った。
「お前はな、うちのようにレベルの高い所では通用しないんだよ」
「まあな、向こうでも頑張ってくれ・・・うん」
大野は机の上に置いていた封筒を手に取ると、
「はい、赴任の経費だ」
「お前みたいなやつなんか、バスで十分なのに、支社長が夜行列車分の経費を出してくれたんだ・・・ありがたく思え!」
大野が立ち上がった。煙草を一本、箱から出すとオフィスから出ていく。伊東がすぐに後に続く。
「いやあ・・・支社長、あいつへの温情、さすがですね・・・・ハハハッ」
伊東たちの声が聞こえなくなっても、徹はなかなかその場から動けなかった。
ふと、我にかえって周りを見た。皆が気まずそうにこちらを見ていたが、突然仕事を始めた。
居た堪れなくなった徹は、机に戻ると引き出しや書類の整理を始めた。
「高山君!」
ふと顔をあげると、真剣な表情で森崎が見つめていた。
「ちょっと・・・」
森崎に促され、徹はオフィスを出た。
森崎が早足で歩いて行く。徹は急いで森崎を追った。
森崎と徹は喫茶店に入った。コーヒーを注文すると、
「しかし・・・・本当に大変なことになったな」
森崎の言葉に、徹は無言で頷いた。
「今は・・・君も辛いかもしれないが・・・」
真剣に徹の眼を見ると、
「君の実力なら、これから行く支社の売り上げを、全社でトップにすることも出来ると思うよ」
「エッ?!」
徹は驚いて森崎を見つめた。
「ハハハッ・・・皆があの成績表だけを見ているとは思わないでくれよ」
森崎が苦笑している。
「わかる奴は分かっているよ・・・君の成果を横取りしている“寄生虫”がいるということはね・・・」
コーヒーが運ばれてきた。森崎は一口飲むと、
「君を出すことは、うちの支社とすれば、本当に大きな損失だけどね・・・・全社で見れば、発展のためにも、君の成長のためにも良い結果に繋がると思うよ」
真剣に聞き入っている徹に向って、
「・・・うちの会社だけじゃない・・・・意外に他の会社の人も見ているものだよ・・・この転勤は、君の新しいスタートだぞ!」




翌日

夜、スーツ姿の徹が街を歩いている。
この日、あわただしく借りていた部屋の荷物を転勤先に送り出すと、会社に転勤のあいさつに行った。
嬉しそうににやつく伊東の姿を見るのは、徹にとっては苦痛でしかなかったが、傍らで見守る森崎の姿を見て徹は何とか“大人の対応”をすることができた。

夜の街は学校が終わった学生や、仕事が終わったサラリーマンや、OLで賑やかだ。
「ねえねえ、これからケーキを食べに行かない?」
「いいわね〜〜」
徹の前を、OLらしい二人の女の子が歩いて行く。
その二人に妙な羨ましさを覚える徹。
「あの娘たちも僕と同じように、会社で働いているのに・・・・?」
会社が終わってからも楽しく過ごせるあの二人と、どん底へと突き落とされた僕との差は一体何なんだ・・・ふと、思った・・・あの娘たちと同じようになれたら・・・と。
そう思った瞬間、我に返った。
「そうだ・・・・切符を買わなきゃ」
あまりに慌ただしいスケジュールで、移動手段の事をすっかり忘れていた。
徹の前に、小さな旅行会社があった。
『Tomorrow Travel』
少し古ぼけた建物の中にはパック旅行のパンフレットが置かれ、二十歳そこそこに見える女性がカウンターの向こう側にちょこんと座っていた。
ドアを開けて店の中に入る。
「いらっしゃいませ!」
「どうも・・・」
「ご旅行ですか?」
「いいえ・・・今夜の寝台特急の切符が欲しいのですが?」
徹が行き先を告げると、彼女はカウンターに置かれたコンピューター端末を操作し始めた。
「この時期でしたら、転勤をされるのですか?」
彼女が人懐っこい笑みを、こちらに向けている。
「ええ・・・そうです」
「お仕事・・・大変なのですか?」
「エッ?」
「いえ・・・お疲れのようですから・・・」
「ハハハッ」
僕は、曖昧に笑ってごまかそうとした・・・。
端末を操作していた彼女の指が止まった。
「今夜は、どの列車も満席のようですね・・・」
「そうですか・・・」
困ったな・・・と僕はつぶやいた。
明日、転勤先の支社に出社しなければいけない。度子可野(どこかの)支社の“配慮”で引っ越し先の荷解きもせずに出社しなければいけないスケジュールなのだ。転勤初日から会社を休む・・・度子可野(どこかの)支社からの”申し送り”をされているであろうマイナスイメージからスタートするのは御免だった。
僕の困惑を読み取ったのだろうか?
「ちょっと待ってくださいね」
彼女がもう一度端末を操作すると、
「あ・・・ありました」
微笑みながら、顔をこちらに向けた。
「今夜は臨時特急が走るので、これでよろしいでしょうか?」
「はい! 助かります」
彼女が端末を操作すると、発券機が切符を吐き出した。
「はい、こちらになります」
「ありがとうございます」
僕は、お金を払うと、店のドアを開けた。彼女は立ちあがると、僕に向かって一礼をした。
「新しい人生への良い旅になりますように・・・」



徹が駅のホームに立っている。
長距離列車の発着するこのホームには、人影が少ない。
向かいのホームでは、発着する通勤電車がホームにあふれる通勤客を飲み込んでいく。
昨日までは徹も、あのホームで同じように電車に乗っていた。
それが、今ではその光景を“見る“立場になっている・・・・そして、徹はこの駅から旅立つのだ。
『列車が入ります・・・』
ホームにアナウンスが流れ、赤い電気機関車に引っ張られた青い車体に白いラインの入った寝台特急が駅に入ってきた。
列車に乗り込み、スーツの内ポケットから切符を取り出した。
「個室寝台? A寝台のお金なんて払っていないのに・・・?」
戸惑ったが、今更、店に行って交換をできるわけでもない。現地に着いてから不足分を店に送ろう。
僕は、個室のドアを開けた。
荷物を置いて既にセットされているベッド兼用の座席に腰をおろした。
汽笛が響き、列車がゆっくりと動き出す。ホームの光が後ろに遠ざかり、列車は夜の街を走り抜けていく。僕は、駅で買った弁当の包みを開いて遅い夕食を食べ始めた。
ドアをノックする音が聞こえ、僕はテーブルに弁当を置いた。
「失礼します、乗車券を拝見します」
ドアを開けると、可愛らしい女性の車掌が立っていた。
切符を見ると、
「はい、ありがとうございました」
ニッコリ笑うと、ペコリと一礼をした。
「今時、客車の夜行寝台特急は珍しいですね・・・」
人懐っこい笑顔にひかれて、僕は車掌に話しかけていた。
「車内なんて、“昭和”といった感じだし」
「はい! 臨時なのでいつも走っているわけではありませんし、お客さまもこのような車内の方が癒されると思いますので・・・」
車掌はにっこり笑うと、
「お客さまも、そうではありませんか?」
僕の目を覗き込みながらそう言った。
「エッ?」
僕は戸惑ったが、
「そ・・・そうだね」
曖昧に笑った。
「夜行列車は、たくさんの人の人生を運んでいますからね・・・」
車掌は、通路の向こう側の窓に視線を向けた。 街の明かりが、まるで流れ星のように流れていく。
「お客さまも、明日の朝になれば新しい人生が待っていますよ」
ニッコリほほ笑むと、
「それでは・・・」
静かに個室のドアを閉めた。



「新しい人生か・・・」
弁当を食べ終わると、僕はビールを飲み始めた。
傍らには、赴任先の支社の資料の入ったアタッシュケースがあるが、開ける気にもならない。
僕の脳裏に、さっきの車掌の笑顔、旅行会社の女性・・・・そして、あのOLたちの楽しそうな姿が浮かんできた。
「なんだろうね・・・この差は?」
辛さ・・・悔しさに押し潰されそうな徹は苦しそうに笑った・・・・いや、本当は泣きたかったに違いない。
「新しい人生・・・・本当に来ると・・・いいね・・・」
疲労感と酔いのせいだろうか? 徹は、心地よい眠気に体を任せると、ベッドに横になった。



翌朝

支社のオフィスに入ろうとした森崎は、伊東の笑い声を聞いて足をとめた。
「だからね、あの時のあいつのトラブルも俺が尻拭いをしたわけだよ!」
伊東が、オフィスのOLたちを相手に、自分の“手柄話”をしているようだ。
それを、OLたちと、支社長の大野が一緒に聞いている。
「そうなのですか?」
OLたちの反応を見て、伊東は嬉しそうに、
「そう言えば…」
わざわざ、“○○事件”とタイトルをつけてまで、面白おかしく徹のことを貶めて笑いを取っているようだ。
しかし、森崎は知っていた。 実は、その“事件”を起こした人間と、解決をした人間が“逆”であるということを。
しかし、わざわざ顧客がここまで来て「それは違います」などと言いに来るわけもなく、徹自身も転勤をして、もうここにはいない。“手柄”はすべて伊東のものだ。
「伊東さんは、すごいですね!」
言われて、うれしそうに笑う伊東。
意を決して部屋に入ると、おはようございます・・・・と挨拶をして、森崎は大野の前に立った。
「今日から、高山君は転勤先の支社で働くことになります・・・・本当にこれでよろしいのですか?」
「何を言っているんだ?」
訝しげに森崎を見る大野と伊東、一気に変わった“空気”に戸惑ったのか、OLたちが遠巻きに三人を見ている。
「彼はこれまで、この支社で優秀な成果をあげていました。その彼を手放せばどうなるか? 想像はつきますよね?」
「あいつは何もしていない!」
伊東が遮った。
「むしろ、厄介者がいなくなって清々しているんだ!」
「また、新しいのを入れればOKだ・・・数は同じだ」
大野が言うと、森崎は大きくため息をついた。
「わかりました・・・」
森崎が机に封筒を置いた。『退職届』・・・丁寧な字で書かれている。
「人材を大切に出来ないのでしたら、会社の発展はありえないと私は思います。 私は高山君に自分の持っているものをすべて教えるつもりでした・・・」
森崎が冷たい視線を伊東に注いでいる。伊東の少し薄くなった頭が興奮から赤くなっているようだ。
「その彼が、『厄介者』なのでしたら、教えている私も同じということです。 馬鹿らしいので辞めます、『新しいの』を入れてください」
お世話になりました・・・森崎は大野に頭を下げると、背筋を伸ばして清々しい顔で歩いて行く。 大野と伊東は、とっさに言葉が出なかった。
「さてと・・・」
森崎は、ビルの窓から街の景色を見つめている。
彼には、他社から入社の打診がいくつもあったが、森崎は徹を育ててから転職をするつもりだったのだ・・・・しかし、もう、ここにいる理由は無くなった。
「新しい会社で、あいつが成長をして移ってくる準備をしておいてやるか?」
森崎はにっこり笑うと歩き出した。
彼の眼には、人間的にも成長をして彼と再会をする徹の姿が見えていたのかもしれない。



窓のカーテンの隙間から朝の光が入ってきている。
徹は伸びをすると、ベッドから起き上がった。
「?!」
胸が重い? 思わず着ていた浴衣の胸をはだけた。 本来の徹の物よりも少し大きな、ピンク色の胸の突起を乗せた豊かなバストがあった。
それだけではない、まるで絹の糸のように髪の毛が長く伸びている。 
鏡を見た。
どこか徹の面影を残した二十歳そこそこに見える女性が、戸惑った表情でこちらを見ている。
じっと鏡を見ているうちに、体の奥からまるで波のように感情が押し寄せてきた。「そう・・・これがわたしなんだ・・・」と・・・。
徹は、持ってきていたバッグを開けた。ブラジャーを取り出すと、その豊かなバストに付けた。
浴衣を脱いで、滑らかな肌触りのブラウスを着た。スーツのスカートを、そしてスーツの上着を着て、化粧ポーチを取り出すと身支度を整えた。
車内アナウンスが流れた。もうすぐ駅だ。トートバッグの中の書類を確認した。いつの間にか、持っていた住民票や運転免許証が女性の名前に変わっている。そして、それを見ている徹には、違和感は感じられなかった。
列車がスピードを落としていく。徹は荷物をまとめるとドアの前に立った。列車が止まりドアが開く。パンプスを履いた徹がホームに降り立った。スカートから綺麗に伸びた足がホームを吹き抜ける風を感じている。
ベルが鳴った。向かいのホームに停まっていたベージュと赤のツートンカラーのディーゼル特急がエンジンの音を響かせながら走りだした。
またベルが鳴る。徹の乗ってきた列車が発車するのだ。先頭に繋がれた二台のディーゼル機関車のエンジン音が大きくなり、ゆっくりと列車が動き出す。
車掌室からこちらを見ていた女性車掌がにっこりとほほ笑むと敬礼をした。
ブルーの車体に付けられた赤いテールランプが次第に小さくなっていく。



列車が見えなくなると、徹はゆっくりと歩き始めた。
「これから私の新しい人生が始まる・・・・」
徹はニッコリ微笑むと、会社に向かって歩いて行った・・・・。




駅(第2話)終わり


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こんにちは! 逃げ馬です。

この春のJRグループのダイヤ改正で、伝統のある寝台特急が、また姿を消すことになります。
「時代の流れ」・・・・と一言で言うのは簡単なのですが、時にはのんびりとした旅をしたい逃げ馬としては、本当にさびしい限りです。
そんな思いを込めて、このSSを書いてみました。

去りゆく列車たちに「お疲れさま」・・・。


なお、この小説はフィクションであり、登場する団体・個人は実在のものとは一切関係のないことをお断りしておきます。


2009年3月14日 逃げ馬



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