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気まぐれTSF

(第3話)

作:逃げ馬



「さてと・・・・・」
僕はパソコンの前で伸びをすると、プラウザを閉じた。
時計を見ると、夜11時を過ぎていた。
小腹が空いたな・・・・・僕は財布を手にすると、家を出てコンビニに向かった。
「いらっしゃいませ!」
コンビニに入ると、この時間でも店員が元気に挨拶をしてくれた。
雑誌コーナーから冷蔵庫の前に向かう。
お茶のペットボトルを手にして、おにぎりでも買おうと・・・・・?
「・・・・・?」
弁当を売っているコーナーに、見慣れないカップ麺が並んでいる。
気になったわけではない。
しかし・・・・・なぜだろう?
僕は、そのカップ麺を手にして、レジに向かっていた。
「ありがとうございました!」
店員の声を背中で聞きながら、僕は店を出た。


家に戻ると、お茶とカップ麺をテーブルに置き、カップ麺を包んでいるフィルムをはがしてお湯を注ぐ。
蓋をして3分待つ。
どんぶりを包んでいるフィルムをはがすと、きつねうどんが現れた。
「さて・・・・・」
僕は割り箸を手にして、
「いただきます!!」
割り箸でうどんをつまみ、一口食べた。
「おっ?!」
旨い! まるでうどん屋で食べるような歯ざわりと、うどんのこし。
さすがは新発売の商品だ・・・・・・そう思いながら、さらに一口食べようとしたのだが・・・・・?
「・・・・・?」
どんぶりの湯気の向こうに、何かが見える。
「エッ?!」
どんぶりの湯気の向こうには、抜群のプロポーションをした女の子がいた。






どうして?
誰もいないはずの部屋に、なぜ・・・・・?
しかも、可愛らしい女の子が?
ありえない状況なのだが、現実にテーブルの向こう側には白いワンピースを着た女の子が、いわゆる『体育座り』をして、可愛らしい微笑みを浮かべながら僕を見ているのだ。
かわいい・・・・・でも、ありえない・・・・・。
複雑な思いが渦巻く中で、僕がようやく言ったのは、
「君は・・・・・誰?」
あまりにも当たり前の一言だった。








「わたし・・・・・?」
白いワンピースを着た女の子は、その可愛らしい顔に悪戯っぽい微笑みを浮かべ、吸い込まれてしまいそうな大きな瞳で、テーブルの向こう側から僕を見ている。
「知っているくせに♪」
クスッと笑った彼女に、
「いや、知らないよ」
今、初めて会ったわけだし、そもそも何故、僕の部屋にいるんだよ? 僕が尋ねると、
「わたしは、そこにいたのよ♪」
女の子が指を指したその先は、僕が手にしているうどんのどんぶりだ。
可愛らしい女の子に、からかわれている・・・・・思わず苦笑いをしてしまった。
「あまりからかわないでくれよ・・・・・」
僕は箸で、うどんに載っている揚げをつまむと、口に入れた。
噛むと、よく味の染みた揚げからうどんの出汁の味が口に広がって『幸せな気分』に・・・・・と、思っていると、
「痛い!」
突然の声に、僕は思わず飛び上がってしまうほど驚いた。
テーブルの向こう側で女の子は、ワンピースの裾から伸びる白く綺麗な足を両手で撫でていた。
「どうしたの?」
僕は驚いて声をかけたが、
「いえいえ、お気になさらず」
どうぞ、お召し上がりください 。女の子が笑った。
何だったのだろう? 僕は首をかしげて、また箸で揚げをつまむと、一口・・・・・?
「痛い!」
「?!」
テーブルの向こう側を見ると、彼女が右手で左腕の白い肌を撫でていた。
女の子が「痛い」と言うのは、僕がうどんを食べるタイミング?
「まさか・・・・・僕がこれを食べると、君は痛みを感じるの?」
「気にしないで下さい♪」
彼女は明るく言った。
美味しく食べて下さいね♪ 彼女に促されて、僕はうどんを食べ始めた。
やはり、このうどんは旨い。
インスタントのはずなのに、うどん屋で食べているような味なのだ。
「わたしは、そのうどんの分身・・・・・だから、そのうどんを食べると、わたしは痛みを感じたの・・・・・」
彼女の言葉を聞きながら、僕は一心不乱にうどんを食べ、出汁をすする。
「分身? それなら、全部食べてしまうと、どうなるんだ・・・・・?」
うどんを全て食べ終わり、どんぶりを持ち上げて出汁を全て飲み干した。
アアッ・・・美味しかった・・・思わず声が出た。
どんぶりをテーブルに置くと、テーブルの向こう側から女の子が大きな瞳で僕を見つめていた。
「美味しかったですか?」
「ああ、美味しかったよ」
でも・・・・・と、僕は彼女を見つめた。
「君は、このうどんの分身だろ? 僕が完食しても、なぜこの部屋にいるんだよ?」


それとも、幻か?と、僕が言うと、
彼女はテーブルの向こう側から、僕の側にやって来て床に座った。
そして彼女は、両手を僕の右手に置いた。
そして僕の右の掌を、自分の左の頬にあてて、
「幻では、ないでしょう?」
右の掌から伝わってくる滑らかな肌触りと、彼女の体温。
「ああ・・・・・幻ではないな・・・・・」
彼女は微かに笑うと、彼女の吐息を感じることができるほどの距離に顔を近づけてきた。
そして、大きな瞳で僕の目を真っ直ぐ見つめながら、


「わたしのこと・・・・・好き・・・・・?」


甘く囁くように言われた僕は、自分でも知らないうちに頷いていた。
彼女が、両手を僕の頬にあてた。
僕の心臓の鼓動が高鳴る。
彼女は、僕の目を真っ直ぐ見つめている。
彼女の顔が、僕に近づいてきた。
唇が触れそうな程の距離だ。
彼女の瞳から、目を反らす事が出来ない。
なんて綺麗な目だ・・・・・彼女の中に吸い込まれてしまいそうな錯覚を感じた。その時、


「わたしに・・・なりたい・・・・?」


彼女が囁いた。






彼女になる・・・・・。
彼女とひとつになれる・・・・・。


「・・・・・・」


僕は自分でも気がつかないうちに頷いていた。


「ありがとう・・・・・」


彼女の柔らかな唇が、僕の唇に触れた。


その瞬間。


僕は身体に不思議な感覚を感じた。
「?!」
身体全体に、まるで見えない何かに押さえつけられているような感覚を感じた。
僕は彼女から身体を離して立ち上がった。
彼女も微笑みながら立ち上がった。
僕の前で、彼女が微笑んでいる。
僕の身体は、相変わらず『何かに押さえつけられているような感覚』を感じていた。
すると、不思議な事が起き始めた。
立ち上がった時には、僕は彼女を見下ろしていた。
それが少しずつ僕の視点が下がり、いつの間にか彼女とほとんど変わらない背の高さになっていた。
着ていたシャツやジーンズに『隙間』が出来ている? 身長だけではなく、身体全体が小さくなったのか?




戸惑いを感じていた僕に、更なる変化が起き始めた。
半袖のシャツから出ている腕の体毛がポロポロと抜けて、日焼けをした皮膚まるでゆで玉子の殻を剥いていくようにポロポロと剥がれていく。
その後に現れたのは、女の子のように白い肌だ。 それなりにあったはずの筋肉もなくなり、力仕事などしたこともないような細い腕に変わってしまった。
「エッ?」
思わず自分のお尻を見下ろすと、ズボンのお尻のあたりがはち切れそうな程に、丸く膨らんでいた。
それと合わせるかのように、足の爪先がうちがわを向いていく。
ウエストがキュッと細くなり、それはまるで・・・・・?
否、そんな馬鹿なことはネット小説かなんかで・・・・・自分で考えた事を否定したのだが、
「?!」


遂にその場面がやって来た。




シャツの下に隠れている胸の先端が自己主張を始めた。ツンと硬く尖り、乳輪の回りが膨らみ尖った形に、そしてそれはやがて、丸く形良く隆起していく。
そう、僕の胸は今まさに『少女から女性への胸の成長』を短時間で体験させられているのだ。
と、いうことは・・・・・?
「ウグッ?!」
股間にある『自分の分身』が小さくなっていく。
すっかり変わり果てた掌を股間にあてると、長年共に過ごしたそれは、まるで溶けるように消え去ってしまった。
逆に、左右の下腹部に、何かが出来る感覚を感じた。
僕の頭の中に、まるで映像を見ているかのようなイメージが見えてくる。
左右の子宮が生まれ、そこから股間に向かって『女性だけが持つ器官』が作られていくイメージが。
僕は両手で自分の身体を抱き締めて、床に座った。
彼女はそんな僕を微笑みながら見つめている。
いつの間にサラサラになった髪が肩にかかるほどに伸びていた。
「そんな・・・・・?」
自分のものとは思えない可愛らしい声で呟き、両手で顔を覆った。
サラサラの前髪が、細く、まるで弓のように美しい弧を描く眉が、プニプニと柔らかな『女の子の肌』が僕の掌に感じられた。


いつの間にか身体に感じていた押さえつけられているような感覚は消えていた。
彼女が僕の顔を覗きこむように見ると微笑みを浮かべながら手を差し出した。
「立てる?」
僕は彼女に手をとられながら立ち上がった。
彼女が前に向かって手を翳すと、レトロなデザインの姿見が現れた。
そこには・・・・・『僕の顔を前に現れた女の子』が二人映っていた。
一人は彼女だ。
では、もう一人映っている『男の服を着た女の子』は・・・・・?
そう、僕だ!
僕は彼女と同じ姿になってしまったんだ。
彼女の横で鏡に映る『女の子』は、長い睫毛を震わせながら、僕を見つめている。
「わたしになれたわね♪」
彼女が言うと、彼女の体を光が包んでいく。
「これから楽しんでね♪」
女性としての人生を・・・・・やがて光が消えると部屋の中には、彼女と同じ姿になったのか僕だけが残された。


僕はゆっくりと視線を動かし、見慣れたはずの自分の部屋を見渡した。
見慣れたはず・・・・・そう、見慣れたはずなのに何かが違う。
カーテンが、ベッドが、ついさっきまでうどんを食べていたテーブルが・・・・・部屋のあちこちに『女の子らしさ』が感じられる。
まあ、僕が着ているのは男の服なのだが・・・・・。
僕・・・・・?


この身体なのに・・・・・?


部屋に置かれたままになっている姿見を見ると、男物の服を着た美女がこちらを見ている。
しばらく姿見に映る美女を見つめていた・・・・・『この人が・・・・・?』・・・・・すると突然、


「?!」


全身にしびれたような感覚を感じると同時に、身体の自由がきかなくなった。
『どうして?』
恐怖心すら感じ始めたその時、身体が勝手に動き始めた。



鏡に映る女の子が着ている『男性の服』・・・・・シャツとジーンズを脱いでいく。
それは『僕自身』が、自分が着ている服を脱いでいるということだ・・・・・たとえ自分の意思ではないとしても。
シャツを脱ぐ時には、胸に引っかかる・・・今まで感じたことがない感覚だ。
形が良い胸が部屋の空気に曝され、その先端でピンク色の乳首が何かを訴えるかのようにツンと尖っている。
白く細い指がジーンズのベルトを外してジーンズを脱ぐと、あっという間にトランクまで脱いでしまった。
身体が自由にならない僕は、なにもすることが出来ない。
全てを脱ぎ去った女の子は、再び鏡の前に立った。
そして、その顔に満足そうに微笑みを浮かべた。
まるで僕に見せつけるかのように。


鏡に映っているのは美しい・・・穢れを知らない美しい裸体だった。
そしてそれは、『僕自身の身体』なんだ。


『わたしになりたい?』


再び彼女の言葉が聞こえてきた。


鏡に映っている女の子が、吸い込まれそうな美しい瞳で僕を見つめている。


『僕は・・・わたしは、貴女に・・な・・・る・・・』


今思うと、あれは男としての僕への決別だったのだろう。


わたしは鏡の前を離れると、下着を入れていたタンスの引出しを開けると、トランクスを手にした。
次の瞬間、トランクスは滑らかな布地でできた淡いピンク色のショーツに変わっていた。
わたしは立ち上がり、ショーツを穿いた。
ショーツは大きくなったわたしのヒップを包みこんだ。
わたしは引出しからTシャツを手にした。
するとさっきと同じように、シャツはわたしが手にした瞬間、ショーツとお揃いのブラジャーに変わっていた。
わたしは、もう何年もそうしてきたかのように、女性だけが持つ美しい二つの膨らみをブラジャーのカップに入れて、肩紐を身体に合わせた。
視線を落とせば、胸元には『胸の谷間』があり、女性だけがつける下着の感覚が肩と背中・・・そして胸から感じられる。
視線を引出しに戻すと、
「アッ・・・?」
引出しの中にあったはずの男物の下着は、いつの間にか全て『女性の下着』に変わっていた。
まさか・・・・・?
わたしはクローゼットの扉を開けた。
そこにあったのは、清楚なブラウスやフェミニンなワンピース。
ミニスカートや、フレアスカート。
テニスウェアまであるのが不思議なのだが?
ジーンズもあるが、やはりレディースものだ。
そう、この服は『いつもわたしが着ているもの』・・・・・わたしはキャミソールを着て、白いブラウスに袖を通した。
クローゼットから膝丈の水色のフレアスカートを取り出して足を通した。
ウエストでホックを留めてファスナーをあげる。
足にスカートの布地の感覚を感じる・・・・・そう、わたしは・・・・・?
鏡の中でブラウスとスカートを身に付けた『わたし』が満足そうに微笑んでいる。
わたしは右に、左に・・・・・足を組んだり、ちょっと前かがみになってみたり・・・・・ポーズをとりながら『女の子のわたし』の魅力を堪能していた。

気がつくと、パステルカラーのカーテンの隙間から朝の陽光が差し込み、小鳥のさえずりが聞こえ始めていた。

さあ、出かけよう・・・・・わたしはトートバックを手に取り、出かける準備を始めた。
運転免許証には、澄ました私の顔写真が貼られて『わたしの名前』が記入されていた。

間違いない、わたしは変わった。

わたしは部屋のドアを開け、朝の街に一歩踏み出した。



わたしの『新しい一日』が始まった。



気まぐれTSF
第3話
(おしまい)


作者の逃げ馬です。
今回の更新では、以前に掲示板で書いた『CMネタを』再編集して掲載してみました。
書いている逃げ馬も、このCMは楽しく見ています。
キツネさん、かわいいぞ!(笑)

昨年(2017年)は、リアル世界が忙しすぎて、あっという間に12か月が「吹っ飛んで」行きました。
楽しく書いていた『TRANS LINE』を昨年中に完結させることができず、逃げ馬にとっては残念な年になりました。
2018年、少しは執筆をする時間がとれそうです。
いろいろと書いていきますので、よろしければ今年もおつきあいください。

それでは、また次回作でお会いしましょう!

2018年1月 逃げ馬




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