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24時間 
鈴木さんの場合



作:逃げ馬







鈴木直人は、剛気体育大学付属高校の3年生。今年は受験生だがクラブでの練習に明け暮れ、未だに進学先は決まっていない。
身長が180cmを超え、体重も90kg・・・入学当時からいろいろな運動部から勧誘を受けた直人が選んだのは、柔道部だった。
高校三年間で、2度の全国制覇を成し遂げた直人。「勝つ喜び」を知った直人は、一層柔道にのめりこんでいった。
この日も練習を終えた直人が家に帰ってきた。
「ただいま〜〜。 腹が減った〜〜〜」
玄関を開けるなり、直人が大きな声で言った。
「こら、直人! もっとちゃんとしなさいって、いつも言っているでしょう?」
台所から、母が来るなり直人をたしなめた。
「はいはい! 早くご飯を食べさせて!」
直人が脱衣室に置かれた洗濯機の中に、柔道着を放り込みながら答えた。
「もう!」
母が頬を膨らませる。 洗濯物を出し終えた直人が横を通ると、
「もう! 汗臭い!! 先にお風呂に入れば?!」
「お腹が空いているから・・・」
さっさと台所に歩いて行く直人。 母の横をすり抜けようとした瞬間。
「臭い! もう!!」
母が顔をしかめた。
直人が笑いながら歩いて行く。 母は直人と洗濯機に放り込まれた柔道着を交互に見ながら大きな溜め息をついた。

母の名は鈴木ひろ子。一人娘で両親からは“箱入り娘”として育てられ、大学は多くの政治家や学者、文化人やジャーナリストを世に送り出し、世間では名門女子大と呼ばれている純愛女子大学を卒業して大手銀行でOLをしていた。
その時に今の夫と職場結婚をして退職し、後に直人が生まれた。
自分と同様に直人も“ひとりっ子”として育ったわけだが、男の子、そしていわゆる“体育会系のノリ”にはついていけず、最近では戸惑ってばかりいる。



ひろ子は台所へ行くと、食事の準備を始めた。
すでに作ってあった料理を手早く食卓に並べていく。まるでどんぶり鉢のような茶碗にごはんを大盛りにして直人に手渡すと、
「いただきます!!」
忙しく箸を動かしながら、並んだ料理をどんどん平らげていく。
がっしりとした直人の体を維持するには、それなりの量の“エネルギー”が必要なのであり、それが消費されることで発生する“老廃物”もかなりの量になる。



食事を終えた直人は風呂に入り、今は自分の部屋でテレビを観ている。
お笑い番組でも観ているのか、時折大きな笑い声が聞こえてくる。
ひろ子は洗濯を始めていた。
でたらめに洗濯機に放り込まれた衣類を仕分けをして、次々洗濯をしていく。
汗臭い柔道着を手に取ったひろ子は、思わず顔をしかめる。
改めて洗濯機に入れると、たっぷり洗剤を入れた。
「もう! 本当に臭いんだから!!」
言うまいと思っていても、思わず口に出してしまうひろ子。スイッチを入れると、洗濯機が賑やかに動き出した。

ひろ子は妊娠をした時には、秘かに女の子が生まれてくることを望んでいた。
残念ながら?生まれてきたのは男の子だったが、ひろ子は直人が健康に、そして“王子様のように“育ってくれることを望んでいた。
子供のころから学習塾やピアノ、バイオリン・・・いろいろ習い事もさせてみたが、どれも続かなかった。
あれだけ激しい柔道をしても怪我一つせず、“健康に“ということは実現をしてくれたのだが・・・。



「・・・どうして・・・?」
ひろ子は、納得がいかなかった。
自分は良い妻になろうと、そして、よい母になろうと努めてきた。
しかし、なぜこんなに理想とずれてしまったのか?
布団に入ってもなかなか寝付けなかったが、少しは眠ったのだろうか? いつしか雀のさえずる声で目を覚ました・・・。



「おはよう!」
ひろ子が朝食を作っていると、直人が台所にやってきた。
すでに夫は会社に出勤をしている。 直人が椅子に座るとひろ子はテーブルに朝食を並べ、いつものように大盛りのご飯を直人に手渡し、自分も朝食を食べ始めた。
「直人?」
ひろ子は、忙しく箸を動かす直人に向かって口を開いた。
「なに?」
「年が明けたら大学の受験だけど・・・どこの大学を受けるの?」
「うん・・・・?」
直人は箸を動かすのを止めない。ご飯を口に頬張ったまま、
「・・・もちろん・・・・」
「もちろん?」
「剛気体育大学に行くよ」
「エッ?」
驚いて直人を見るひろ子。 ようやく直人が箸をとめた。 口の周りには、ご飯粒がたくさんついている。
「だから、剛気体育大学だよ。 決まっているじゃん」
何を驚いているんだ・・・といった表情でひろ子を見つめる直人。ひろ子は言葉が出ない。
「俺の競技成績なら、内部推薦を受けることが出来るし、もっと柔道をしたいしね・・・・」
また忙しく箸を動かし始めた直人。 ひろ子は言葉が出ない。また、4年間柔道を・・・“男らしい競技”を自分の息子が続ける。それを理解した瞬間、思考が止まってしまったのだ。
「じゃあ、行ってきます!」
朝食を終えると、直人が柔道着の入ったスポーツバッグを持って学校へ出かけて行く。
「行ってらっしゃい」その一言すら、ひろ子は出せないまま椅子に座っていた。



午後
ひろ子は街へ買い物に出た。
“自分の理想”と、どんどんずれていく生活・・・それを思い浮かべるたびに、ひろ子の足取りは重くなっていった。
クリスマスが終わり、あと二日でお正月・・・この時期の街は、新しい年を迎える準備で活気にあふれていた。
その街の賑わいから、ひろ子だけが取り残されたような感覚になっていた。
「もしもし?」
男の声が聞こえた。
「もしもし・・・そこのご婦人?」
ひろ子が声の聞こえた方を見ると、白い布をかけられた机を前にして、白い顎鬚を蓄えた老人が座っていた。
布には手相の絵が描かれている。老人が机の向こうで微笑んだ・・・・癒されるような笑みだ。
「ちょっと見てあげましょう・・・そこに座りなさい・・・」
ひろ子は引き寄せられるように、机の前に置かれた丸椅子に座った。
「ふむふむ・・・」
老人は虫眼鏡を取り出すと、ひろ子の目をじっと見つめている。やがて、
「子供のことで悩んでおられるようじゃの・・・」
老人が穏やかに微笑んだ。その微笑に癒されたのだろうか? 気がつくとひろ子は、今まで夫にも語らなかった思いを、その占い師に話していた。 妊娠した時の喜び。女の子が生まれてくることを望み、『直美』という名前をつけようと決めていたこと。男の子とわかり、正直少しがっかりしたが、それでも鈴木家の『王子様』に育てようと思っていたが、次第に理想からどんどんずれていく悲しさ・・・・。
頷きながら聞いていた老人が、机の下から小さな袋を取り出した。
「これを・・・」
ひろ子は受け取ると、袋の口を閉めていた紐を解き開けてみた・・・よい香りがひろ子を包む。
「その袋の中のものを、お子さんがお風呂に入るときに湯船に入れてあげなさい・・・」
老人は微笑を浮かべながら、
「・・・そこから一日・・・24時間、お二人は不思議な時間を体験するじゃろう・・・」



ひろ子が家に帰ってきた。
商品の入ったスーパーのビニール袋をテーブルに置くと、崩れるように椅子に座った。
「フウ〜〜〜」
大きくため息をつく。
スーパーからの帰り道、わずかな時間だったが、あの占い師に自分の心に溜めてあった物を話したことで、ひろ子の心は少し軽くなった。
「さあ、お風呂を沸かして、晩御飯の準備を・・・・」
椅子から立ち上がろうとした瞬間・・・。
『その袋の中のものを、お子さんがお風呂に入るときに湯船に入れてあげなさい・・・』
あの占い師の言葉が、脳裏に甦ってきた。
買い物袋の中をゴソゴソと探し、あの布袋を探し出し、袋の口を縛ってある紐を解くと心地よい香りがひろ子を包む。
「いったい・・・・何が・・・・?」
「ただいま!」
玄関から聞こえた直人の声に、ひろ子は我に帰った。廊下を足音が近づいてくる。
「晩御飯まだ?!」
スポーツバッグを床に置いて尋ねる直人。
「すぐに用意するわね」
手にしていた布袋をテーブルに置いて、食事の支度にかかるひろ子。
直人が横を歩いていく。汗の匂いがひろ子の鼻をつくが、直人は気にならないようだ。ひろ子は、また現実に戻され大きくため息をついた。



翌日は、大晦日。
鈴木家の玄関にも、しめ縄が飾られた。そんな日にも、
「行ってきます!」
スポーツバッグを片手に玄関を出て学校に向かう。
「行ってらっしゃい」
ひろ子は笑顔で送り出したものの、直人の姿が見えなくなると大きなため息をついた。
「大晦日まで柔道だなんて・・・・」
そして、練習が終わると、また汗臭い柔道着と一緒に帰ってくるのだ。
ひろ子は首を振って暗い気持ちを振り払うと、正月準備を始めた。
大晦日の一日は、あわただしく過ぎていく。
おせち料理の準備が終わると、もう夕方だ。
「そろそろ帰ってくるわね」
バスルームに入り、給湯器の「湯はり」ボタンを押した瞬間、また、あの占い師の言葉が甦ってきた。
『その袋の中のものを、お子さんがお風呂に入るときに湯船に入れてあげなさい・・・』
ひろ子は小走りに台所に向かうと、あの布袋を持ってバスルームに戻る。
布袋の紐を解き、中のものを湯船に撒いた。



「ただいま!」
玄関で直人の声がした。
「お帰りなさい」
ひろ子が迎えに出ると、直人が廊下を台所に向かって歩いてくるところだった。
「ああ・・・今年の練習が終わったよ! 来年は1月2日からだって!」
いつものように洗濯機に汗の匂いの染み付いた柔道着を入れ、ひろ子の脇を抜けて台所に行こうとする直人に、
「今日は大晦日なんだから、今日くらいは先にお風呂に入りなさい!」
「わかったよ」
渋々従う直人。
ひろ子は脱衣所に入る直人を見届けると、再び台所に戻った。

直人はバスルームに入ると、風呂の蓋を取った。 湯の中には赤い花びらがたくさん浮かんでいる。
直人は、浴室のドアを開けると、台所に向かって大きな声で、
「母さん、今日はどうしたんだよ? 風呂に何か浮かんでいるよ」
「よい香りでしょう? 今年最後のお風呂なんだから、きれいになって出てきなさい」
直人は、舌打ちをしながらドアを閉めると、
「まったく・・・・」
湯を体にかけると、ゆっくりと湯船に体を沈める。
「ふう〜〜〜〜」
バラの花のような香りが、バスルームに立ち込めている。
「良い匂いだけどさ・・・」
湯船一面に浮かぶ花びらが、直人の体を隠している。花の香りに包まれ、心地よさに意識が遠のきそうな直人。
「やばい・・・のぼせそう・・・」
そう呟いた声が、いつものどすの効いた声とはかけ離れた高く澄んだものだとは、この時は気がつかなかった。
湯船から出た直人は、洗い場に崩れるように座り込んだ。
足に力が入らない。腕で体を支えようとしたが、
「・・・?」
90kg以上ある相手を投げ飛ばすために、鍛え上げたはずの丸太のような自分の腕ではない。太陽にあたった事のないような、白く肌理の細かい肌。鍛え上げた筋肉が消えうせ、皮下脂肪のついた、投げれば折れてしまいそうな細い腕。
そして体を見下ろすと、直人にはあってはならないはずの、ふっくらと膨らんだ胸。キュッと締まった、寝技をかければ折れてしまいそうなほど細いウエスト。そして、“直人の象徴”が・・・?
「ウワ〜〜〜ッ?!!」
バスルームに“女の子の悲鳴”が響いた。



「直人! どうしたの?!」
悲鳴を聞いてひろ子が台所から飛んできた。
「開けるわよ?!」
バスルームのドアを開けると、脱衣所に湯気と一緒にバラの花の香りが流れてくる。そこでひろ子が見たのは、洗い場で自分の体を見つめながら震えている高校生くらいの“少女”だった。
「・・・な・お・・・・と・・・?」
「母さん、俺?!」
「可愛い!!」
思わずはしゃぎ出すひろ子。戸惑う直人をよそに、手早くバスタオルで体を拭いてやると、体にバスタオルを巻いてやり、直人の部屋へ連れて行った。
直人の部屋を開けると、そこはすっかり“少女の部屋”に変貌をしていた。
足の踏み場もないほど散らかっていた部屋はきれいに整頓され、窓には薄いピンク色のカーテンがかかり、ガラステーブルの上には、ティーン向けのファッション誌が置いてある。
「ああ・・・・俺の部屋が・・・?」
へなへなと座り込むな音を見下ろすひろ子。その座り方が”女の子座り”になっているのを見て思わず微笑んでいた。
「さあ、服を着ないと」
直人を促しながら、タンスの引き出しにたくさん詰まっていた下着をコーディネートして、直人に着せていく。
いわば“女性の象徴”とも言える、ブラジャーやショーツを身に着けて、顔が真っ赤になる直人に、
「名前もね・・・・直人じゃだめよねえ・・・・これからは直美って呼んであげるからね。直美ちゃん」
「そんな・・・・母さん」
さらにクリーム色のセーターと、赤いチェック柄のスカートを着ると、ひろ子に促され姿見の前に立った。
スポーツ刈りだった筈の髪の毛は、今は女子高校生のボブカットになっていた。
セーターの胸元は、柔らかな曲線で膨らみ、そこからキュッと引き締まっている。そして、ひざ上までの丈のスカートから伸びる細い足。
それが、今の直人の姿なのだ。恥ずかしさで真っ赤になっている直人・・・今では直美に向かって、
「さあ、直美ちゃん。お母さんを手伝って」
ひろ子に促されて台所に行くと、慣れない手つきで一緒に夕食の準備を始めた。
その夜、父が帰ってきても、女の子になった直人にさして疑問を持たなかったようだ。
自分が男だったと訴える直人=直美の話を聞いて、ひろ子に、
「正月前といっても、高校生に酒を飲ませたのか?」
と言って笑い出す始末だった。それを聞いて微笑むひろ子と、絶望感に包まれる直人=直美。
せっかくの大晦日、直人=直美はテレビを見ても上の空で、“女の子らしいピンク色のパジャマ”に着替えると、ベッドに入った・・・。
「これから・・・・どうなるんだろう?」
不安で寝付かれず、何度も寝返りを打っているうちに、夜が明けていた。



「直美ちゃん、朝よ」
ノックと同時に、ひろ子が部屋に入ってきた。
妙に嬉しそうなひろ子の顔を見て、戸惑う直人=直美に、
「あけましておめでとうございます」
「あ・・・おめでとうございます」
ぎこちなく答える直人=直美に、
「せっかくのお正月だから、直美ちゃんには・・・」
ひろ子が廊下から、桐の箱を持ってきた。
「まさか?」
「そう・・・・ジャ〜〜〜ン」
嬉しそうに箱を開けるひろ子。中には鮮やかな柄の振袖が入っていた。
「これくらい着てもらわないと!」
嬉しそうに微笑むひろ子。呆然としている直人=直美。
ひろ子は直人=直美を促してパジャマを脱がせると、てきぱきと着付けをしていく。
「ほら・・・見て!」
「ああ・・・?!」
姿見に映ったのは、鮮やかな振袖を着た美少女だった。
「さあ、下に行きましょう! お父さんが待っているわよ」
ひろ子に促されて歩き出す直人=直美。 振袖を着た生なのか、その歩き方はすっかり女のこのものだった。
おせち料理を並べた食卓を両親とともに囲んだ。
すっかり女の子らしく・・・ひろ子の理想の”少女”となった直人=直美を見て嬉しそうなひろ子。

一緒に初詣に出かけても、羨望の眼差しで見つめる男の子の視線に気がつくと、直人=直美は頬を赤く染めてうつむいてしまう。
家に戻ると、ひろ子はクローゼットに入っていた“女の子の服”高校の制服、体操服やブルマ。スクール水着やビキニ、たっぷり入っていたスカートやブラウスを次々に直人に着せて、まるで着せ替え人形のようにしてしまっていた。
直人にとっては、“悪夢の一日”、そしてひろ子にとっては長年の夢のかなった元旦だった・・・。

夕方
セーターとスカートを着た直人=直美がベッドに倒れていた。
突然、女の子になってしまい、尚且つ服をとっかえひっかえ着替えさせられ、“着せ替え人形”になってしまった。
女の子の体になってしまったことだけでも戸惑っていたのに、この一日の出来事で、直人=直美はすっかり疲れてしまっていた。
「これから・・・どうなるんだろう?」
昨夜は不安で眠れなかったこともあり、直人=直美はそのまま深い眠りに落ちていった。

台所では、ひろ子がウキウキしながら夕食の準備をしていた。
柔道に熱中をしていた直人。それが可愛らしい女の子になり、自分の言うことに従ってくれる。
そして、柔道をしていたときの男臭さ・・・汗臭さもない。
直人は、剛気体育大学へ進学すると言っていた。しかし、あの体では剛気体育大学へはいけないだろう。
「私の通っていた、純愛女子大学へ行かせるのも良いわね」
直人=直美が自分と同じ、“女の子らしい”道をたどる。“夢がかなった”ひろ子の夢は、さらに膨らんでいた。
突然、
「やった〜〜〜!」
二階から男の歓声が聞こえてきた。料理をしていた手を止め、大急ぎで二階に走るひろ子。
ドアを開けると、がっしりとした男が部屋の真ん中で仁王立ちになっている。
「な・・・お・・・・と・・・?」
「母さん、俺、男に戻ったよ?!」
「どうして・・・?」
呆然とするひろ子をよそに、
「よかったあ・・・・!」
自分の体を撫でまわし、大喜びをしている直人、
「安心したら、お腹がすいちゃった、母さん、晩飯、晩飯!」
ニコニコしながら部屋を出て行く、そして、ふと我に帰った。
「そういえば、女の子になっていたんだな・・・」
肩をすくめると、
「ちょっと惜しかったかな?」

ひろ子は、すっかり“男の部屋”に戻った部屋の真ん中で立ち尽くしたまま、あの占い師の言っていたことを思い出していた。
「24時間の不思議な時間・・・・か・・・・」
淋しそうに部屋を出て行くひろ子。



翌日から、直人は再び柔道部の練習に戻り、ひろ子は再び汗の匂いが染み付いた柔道着を洗うことになった。
ひろ子は、街に出かけるたびに、あの占い師を探していた。
しかし、あの場所に行っても、繁華街に出かけても、あの老人に会うことはできなかった・・・。



「つらいのはわかる・・・・しかし、心の光まで失っては、これからの人生は開けないぞ・・・・がんばりなさい」
台の上に見料を置くと、女性が立ち上がり、「ありがとうございました」と言って歩いていく。
老人は微笑みながら、その後姿を見送った。ふと視線を移すと、ブレザーにチェックのプリーツスカート・・・高校の制服姿の少女が歩いてきた。
「・・・これでいいの・・・?」
彼女は視線を向けているだけで口を動かしていない・・・・しかし、老人にははっきりと聞こえていた。
「彼女の夢はかなった・・・・後は彼女が息子を受け止めることができるかどうかだろう?」
「でも彼女は、まだ納得をしていないわよ・・・」
少女が歩いていく。 老人はその後姿をじっと見つめていた。






24時間 鈴木さんの場合 (おわり)

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こんにちは! 逃げ馬です。

鉄道物が2作品続いたので、今回は逃げ馬流の“正統派?”TSFを書いてみました。
24時間という制限時間の中での変身。
望みの叶ったお母さんは、そのあと大いにがっかりすることになりました。ちょっと可哀想ですが…(^^;
そして、ラストシーン、街で占い師に出会った少女は一体誰?・・・というのは、またいずれ・・・。
今回も、最後までお付き合いいただいてありがとうございました。
また、次回作でお会いしましょう。


なお、この作品に登場をする団体・個人名は、現実に実在をするものとは一切関係のないことをお断りしておきます。



2009年3月 逃げ馬


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<「そして・・・」後日談です>
























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