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一平は真ん中の扉を勢い良く開けた。
倉庫の中の、カビくさい臭い含んだ空気が外に流れてくる。
「寒い!」
一平は倉庫に入ると、スイッチを入れて照明を点けた。
天井につけられた蛍光灯が灯り、倉庫の中を照らした。
バスケットボールやバレーボールがきちんと区別をされて金属製のかごに入っている。
その中の一つに、サッカーボールの篭があった。
一平は寒さに身震いした。
コンクリートで作られた体育倉庫の中にいると、まるで冷蔵庫の中にいるようだ。
さっさとやるべき事を片付けた方がいい・・・・・一平は、篭の中からサッカーボールを取り出すと、空気の入り具合のチェックを始めた。

全てのボールをチェックして、篭に戻すのには5分ほどかかった。
体育倉庫の扉を閉めて、北風が吹く中を駆け足で校舎に向かい、職員室に戻った。
机に置かれた書類の山と戦っている植田友彦に、サッカーボールは全て使える事を伝えると、一平は川口先生の机に置かれたノートを手に、教室に戻った。



「ご苦労様・・・・・大変だったみたいね」
教室に戻ると、川口先生は苦笑いしながら一平を迎えた。
一平は職員室から持ってきたノートを、クラスメイトたちに配っていった。
ノートを配り終えた一平が席に戻ると、教壇に立つ川口先生が、
「さあ、今日で期末試験が終わりました。みんな頑張ったわね・・・・・」
川口先生は生徒たちを見渡しながら、
「後はクリスマスと冬休みね」
弾んだ声で言った後に、悪戯っぽい笑みを浮かべながら、
「その前には通知表があります♪」
生徒たちから笑いが起きた。
「みんな、良く頑張りました、今日はゆっくりして、明日からは二学期の残りを頑張りましょう!」
川口先生が一平を見た。
「起立!」
一平が声をあげる。
川口先生に礼をしながら、一平は試験が終わった解放感に浸っていた。

その日は、一平にとっては『多忙』な一日だった。
中学校から自宅に帰ると、すぐに着替えを済ませて友人の家に遊びに出かけた・・・・・試験中は嫌々ながらも勉強をしていたのだ、それだけに久しぶりに友人たちと遊べる時間は楽しかった・・・・・。



翌日

朝、制服姿の生徒達が、中学校に向かって歩いて行く。
その生徒たちの中に、望月一平の姿があった。
「おはよう♪」
声をかけられて一平が振り返ると、スカートスーツを着た川口亜由美が歩いていた。
「おはようございます!」
一平が元気に挨拶をすると、
「試験が終わってスッキリ・・・・・って感じね」
川口先生に言われて、一平はにっこりと笑った。
川口先生が、悪戯っぽく笑った。
手にしたバッグを指差しながら、
「でも今日から、その試験が帰ってくるわよ」
「?!」
一平が絶望的な表情を浮かべると、川口先生が笑った。
「大丈夫! 自信を持って♪」
その笑顔を見ていると、なぜか一平の気持ちも明るくなってきた。
「ハイ!」
二人が生徒たちと挨拶を交わしながら、学校に向かって歩いて行く。
朝の陽射しが二人を照らしていた・・・・・。





選択

(おわり)




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